秀島史香に関するつぶやきを見つけて

むかーし、Kiddfiveは2年間くらい不動産屋をしており、頻繁にクルマで営業に出ていた時期があった。ろくに数字が上がらずにへこみながらも、ほどよく消耗した心地よい気分の夕方の帰り道なんかに、この人の番組であるJ-WAVEの『GROOVE LINE』をよく聴いていた。秀島さんはとても大人の女性チックな素晴らしい声をしていて、初めてネットで名前を検索してしまうくらいお気に入りのDJであった。画像検索して、軽くブタっ鼻だったのはちょっと残念だった。同番組は放送開始から10年過ぎたいまでも続いているらしい。凄いな。ピストン西沢とのコンビが、ほどよくテンションが高くて楽しいのだ。
クソ暑い夏の日に、大和から金沢文庫とかまでクルマで遠征した帰り道。夕焼けが綺麗で、明日も間違いなく晴れ。ジャケットは後部座席に放り投げて、Yシャツとネクタイで腕まくり。額と背中にじんわり汗を残しながら、両窓を開けて、大きめの音量でラジオを流して、246号を愛車のコロナ(しょぼい)ですっとばす。さっきまでお客にへこまされたことなどすっかり忘れてケラケラ笑いながら、帰ったら何して遊ぼうか、そんなことばかり考えている。実に懐かしい。たまらん。あの時期、社会なんてクソくらえだと思っていたが、いま思えば輝かしい青春時代であった。上司は常に怒り狂った鬼畜生で大変に嫌いであったが、それも含めて最高の思い出である。
不動産会社を辞めたあとも、たまに同番組を耳にする機会があったが、その度に当時の思い出が刻々と蘇る。社会に出たての何ともいえない青春のひとときというか何というか。何をすればいいか分からない不安と、何をしてもいいという自由な気持ちが入り混じって、なんかこう、アツい日々だった。世間に出て目にする何もかもが新鮮で、初めて自分で稼いだ金で好きなもの食ったり、買い物したり、危ない世界に足を突っ込んでみたくなったり、当時は彼女もおらず、これからどんな人生になっていくんだろうと毎日wktkして、大変にエキサイティングであった。
文字に起こしてて、まるで他人事だったように、あの当時の気持ちを新鮮に思い出した。先日、自宅の戸棚の奥底に眠っていた、10年前くらいの2台のインスタントカメラを発見し、興味本位で現像してみたところ、大半のフィルムは死んでいたが、学生時代にハワイ旅行したときの写真が何枚か手に入った。写真を見てようやく蘇った思い出の多いこと多いこと。このように無意識に封じられていた記憶は、一体どれだけあるものか。写真にうつったひとつの景色は、これまでずっと夢に出てきたものであったが、あの当時に見たものが現われていたのだと初めて気が付いたりした。自分の空想が生み出したものではなく、過去に行ったことのある場所だった。
人は未来に、前に進むものであり、昔を懐かしんだところで戻れるものではないと、過去など振り返っても仕方ないと妄信してやってきたが、これらの出来事によって、思い出との付き合い方をよくよく考えさせられた次第。すべてを無理に覚えていようとしても無理があるし、役立つものばかりではないのだが、じっくり振りかえると、自分を含め、人ひとりの人生は決して薄っぺらいものではなく、各人が確かに歩んできた過去を持っている。色々と切り捨ててきたものも多かったが、その中に、本来は失くすべきでない大事なものが含まれていなかったかどうか、また、どんな気持ちで自分はその当時を生きていたか、いま一度振り返ってみたくなった。なんかこう、すんごい宝物が隠されているような気がして仕方ないのだ。自分はいまこそ初心に還りたいのである。
初心ということで、小さい頃から好きだったパナップを久々に食った。なんかパリパリした成分が入って、パッケージも変わってて、美味くなってた。

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