養老孟司さんの講義を聴いてきた

とはいえ、自分は東大関係の人でも何でもない。氏いわく、仕事は会社から任されているものであり、自分のものにしてはいけない。自分のものにしようとするから、怠惰や矛盾や葛藤が生まれる。一方、任されているものであるから、自ら退くor譲ることもするべき。この考えを元に、辞めないこと(若者)と辞めること(幹部)を考えるべし、とのこと。これは仕事に向かう姿勢について述べたものだが、いまの日本の状況に否応なしに直結していると思った。
派遣村の一部の人は、2万円を手にした瞬間どこかに消えた。職を斡旋しても、皆が皆、飛びつくわけではない。辛いだの臭いだの、挙句の果てには給料が安いだののたまい、結局出稼ぎに来たアジア人がそのポジションを獲得し、真摯に仕事に取り組んでいたりする。
一方、その雇う側(会社の舵を取る人たち)も、既得権益にしがみついて離れない。オヤジ層を残し、若者を切り、門を狭め、不安定な雇用体系で働かせている。希望など持てるわけがない。給与の年功序列は崩壊したのかもしれないが、雇用の年功序列は死んでいない。
この組み合わせによってもたらされた状況がいまなのだろうと思う。安易に言いたくはないが、どっちもどっち。若者に労働機会を与えない→若者も食わず嫌い→金が無いから結婚できない→少子化が進む→労働力が減る→モノが売れない→税と保険料が上がる、というところまできた。この状況を生んだ原因には、間違いなくPCとインターネットの普及がある。PCによって作業の最適化がなされ、しょうもない作業に人員を割かなくてもよくなった。インターネットによって、嘘や不要なものが明確になり、商品の化けの皮が剥がれた。
人口比率が変われば、選挙にも影響が出る。自分らの世代は政治や選挙に対する関心が薄い。ましてやおっさん世代に比べて人口も少ないとくれば…、なんじゃそりゃ。あと何年、負け試合をすればいいものか。おっさん勝ち組すぎるだろ。無念極まりない。
若者の仕事に対する意識改革ができたとして、結局ビジネスをするには資本が要る。資本を握っているのはおっさんらであったりするので、やっぱり彼らがリタイアするまで、ここは辛抱しなければならないのだろうか。リタイアすれば、多かれ少なかれ、彼らの資産が自分らの世代に回ってくる。回ってきたときに、また時代はひとつ変わるのだろうか。それはいつぐらい?2020年くらい?不景気、未来は暗い、節約で青年時代を過ごした我々の世代。いまのおっさんらが若い時よりも、草食スペック(計算、予測、判断)は高いはずだが、肉食スペック(体力、感、根性)の不足をどう補うかが課題だと思う。この10年で、ITを中心に世の中はあまりにも、便利な方向に変わり過ぎた。


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