真性テラカオス

■ようやくこのネタが書ける
映画『クローバーフィールド/HAKAISHA』を観てきた。この日の最終上映時間ともあって、場内には自分を含めて10人くらいしかいない。

本作は、2008年5月22日に米国ニューヨークを襲った災害の様子を、ある個人が8mmカメラで撮影し続けた記録映像。ビデオカメラは後にセントラル・パーク(という公園。実在する。)で回収され、米国防総省により“Cloverfield”というコードネームで管理されているらしい。撮影者本人の消息は不明。

米国では1月18日に公開された。公開前のポスターには、薄暗い空の下、首の無い自由の女神像と「1-18-08」の文字だけ。しばらくして「cloverfield」の文字が追加されたが、どんな映画なのかは一切公表されず。予告編も、被災地と化したニューヨークの街と逃げ惑う人々の様子ばかりが映されており、内容はさっぱり読み取れない。何もかもが謎の映画として注目を集めていた。8mmカメラでの撮影のため、とにかく全編を通して手ブレがひどい。そっこーで酔いそうになったので、たまにスクリーン外に目線を外して回復しつつ観る。

序盤は仲間内の送別会の様子を映している。よくあるホームパーティーで、大勢が騒いでる。だが突然の振動・爆音・爆発により、一変して緊迫したムードに。みんなで屋上に駆け上ってみると、マンハッタンの一角でものすごく大きな爆発があるのが見える。現地からここまではかなりの距離があるものの、空を見上げると爆風によって火だるまになった瓦礫がこちらへ飛んでくるではないか。そして近所に着弾。現実に被害が出てる。これはやばい。死ぬ。

ここからはとにかくカオス。道路に出ると自由の女神の首だけがふっとばされてきて、道路も車も建物も人もメチャメチャに。撮影者は一般人。この街に何が起こっているのか、状況がまったく分からない。聞こえるのは不気味な声?のような爆音と振動と、機関銃やミサイルや戦闘機の発砲音。ただただパニックになるばかり。とりあえず火の無いほうへ逃げ惑う人々。そんな中、遠方の崩壊するビルのほうにカメラを向けると、一瞬“なにか”が映る。ビルは勝手に崩壊しているのではない。破壊されている。なんだあれ。明らかに何かが見えた。しゃれにならん。これは夢じゃない。どうしたらいい。このままだと死ぬ!!!!!!!!!怖い逃げろみんなうわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;!!111



こんなかんじで映像が途切れるラストまで続くのだが、もうなんというか、正直、観終わったあとは衝撃すぎて言葉がなかった。心身ともに疲労。臨場感ありすぎで、登場人物に感情移入させられすぎる。彼らが目にしたもの、それはすなわち自分たちが目にしたもの。映像と音と恐怖によって、心身ともに揺さぶられまくり。寝不足のせいもあったのか、意識せずとも心臓の鼓動が速くなって、しかも酔いとの戦い。ちょっとこれはまずい、本当に寿命が縮むと、いったん外に出ようかと思ったくらい。余韻がとにかくすさまじい。

繰り返すようだが、本編自体は一般人が撮ったとされる8mmカメラの映像。なので、ストーリーやら設定やらの解説をしてくれるようなシーンは一切ない。撮影者は何も分からない。上の予告編には、このビデオカメラを回収した場所が「かつてセントラル・パークNYとよばれた〜」とあった。「かつて」ということは、この映像を流している“現在”は、もうこの場所は無いのだろうか。

しかし本作には、これを補うべく、あり余る伏線が用意されている。劇中の登場人物、商品、企業、設定などをググってみると、なんとまるで現実に存在しているかのように、これらのウェブサイトが引っかかる(米国の映画なので、基本的に英語)。製作側からはそういう関連サイトがあることは一切告知されていない(はず)。これは、『クローバーフィールド』について何かを調べようとした視聴者が“たまたま見つける”ことを前提に設置されたサイト。これらのサイトを見ていくと、この災害の原因や登場人物に対する疑惑など、本編について更に多様な憶測ができる。

例えばこのサイト。ずっと開きっぱなしにしてるといきなり“なにか”の声が聴こえるのでスピーカーには注意。ここには何枚かの写真が置いてあり、それらをクリック&ドラッグして見ることができる。写真だけではよく分からないが、なんとなくグロそうなものも混じっている。そのうちの1枚、日本人らしい人物が写っているものをドラッグして思い切り振ると…。このサイトは1月から見ていたのだが、いつの間にか1枚写真が増えている。たぶん日本での公開後に増えたので、今後も何かヒントが落とされるのかも。また、本編の事件に何らかの形で関わっているであろういくつかの映像もネット上に存在する。その一部が下のやつ。





試しにこの企業名である、「tagruato(タグルアト)」で検索してみるべき。クローバーフィールド事件が起こる以前(正確には2007年12月)、何かしらの予兆とも取れる海上プラント(正確には巨大な掘削機らしい)の崩壊事件が発生。世界各国がこれを報道しており、それらの映像もまた存在する。本編そのものにも、どう考えても矛盾を感じる点や気になるカットが多数あり、視聴者の間ではこれらのバラ撒かれたヒントをかき集めて、様々な仮説が立てられている。

結論を言ってしまうと、映像をきっちり見て、これらのヒントをすべて集めたところで、現時点では仮説の粋を出ない。誰もが気になるこの災害の真相は、まだ誰にも分かっていない。だが、最初に貼り付けた予告編の冒頭には、「“クローバーフィルド事件”を記録した複数のビデオ映像」とあった。そうなのだ。どうやら『クローバーフィールド』は続編の公開が決定しており、一説によるとそれは“同じ時間軸で、別の誰かによって撮影されたもう1本の記録映像”であるらしい。この事件を別の視点から見たとき、本作だけでは気づかなかった何かが補完されることは間違いない。

ここにもネタバレや仮説を書きまくりたいのだけど、映画を観た人も少ないだろうし、今日はここまでで。むしろ少ないから書いていいのか。余力がある人は、劇場に足を運んでみて、感想を教えてください。近々、ネタバレ込みの検証もまとめてみる予定。カメラワークと緊迫感のせいで、体調がよくないと本当に気持ち悪くなる可能性があるので、充分注意されたし。っていうか結構シリアスな書き方をしたけど、要するに設定に懲りまくった映画ということで、こういうのが好きなのだ。製作は、海外ドラマ『LOST』を手掛けたJ・J・エイブラムス


・映画公式サイト(英語 / 日本語) (13:55)

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